ユチカ-百年ぶりの雪-

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その町に雪が降ったのは、百年ぶりのことだった。

これは、なに?
初め、皆は慌てふためいた。雪を必死に払いのける者、滑って転ぶ者…。
しかし、子どもたちはすぐに雪で遊び始めた。
「雪は、天からの手紙だって。大昔、ナカヤウキチロウという学者が、そう言ったんだって」
誰かがそう言うと、夢中で遊んでいたユチカは、はっと顔を上げた。
そして皆の輪から外れ一目散に駆け出した。

「おかえり、ユチカ。雪で遊んできたのかい」
寝ていたユチカの母親は、ドアの開く音を聞いて声をかけた。
「母さん、これ」
ユチカは、両手を差し出した。ユチカの手には、家の前に降ったばかりの、真っ白な雪が一掬いのせられていた。
「天国のミミカからの手紙だよ」
ミミカは、生まれるはずだった妹の名前だ。死産だった、赤ん坊の。
ユチカの母親は、じっと雪を見つめた。ユチカの掌で、沢山の六角形の花は、キラキラと笑うように輝きながら溶けた。
ファンタジー
公開:20/02/13 08:35
更新:20/02/13 09:04

ガラマイヤ( 日本 )

読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!

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