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軽やかに僕は彼女の背後に舞い降りた。
気配を感じたのか、彼女は振り向いてこちらの方を見た。
「やあ。やっと逢えたね。僕たち」
彼女は怪訝そうにまじまじと見つめた。
胸いっぱいの感激で、彼女に近づこうとした。
「ぎゃっ!」
彼女は、とても恐ろしいものを見たように悲鳴をあげて後ずさりする。
「どうしたんだい? 僕だよ。僕! 」
「こ、来ないで!」
いきなり頭蓋骨に激しい衝撃が走り、目から火花が飛び散った。
彼女は片手にスリッパを掴んで仁王立ちになっていた。そして、もう一度彼女は僕をひっぱたこうとした。
「な、何をするんだ?!」
狼狽する僕に彼女は非情にもスプレーをかけた。
「や、やめろ…」
手足が麻痺し、頭がボウーッとしてきた。
「生まれ変わったらって、いつも君と…」
薄れていく意識の中で、何者に生まれ変わったのか、僕はようやく悟った。
哀れで小汚い一匹のゴキブリが息絶えようとしていた。
その他
公開:20/02/12 23:17
schoo 見失う輪廻

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