人生遊泳
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父の最期の時が迫っていた。ヒラヒラと父の体の上を写真が漂う。最初は一枚だったが、段々と枚数が増えてきた。
「最後のお別れを」医師が告げる。
父の体から止めどなく写真が舞い上がる。一枚捕まえて見てみると、それは20代と思われる父だった。もう一枚。こっちは母と仲良く手をつないでいる。家族旅行の写真。初孫を抱いてくしゃくしゃの笑顔のもの。
父の人生が写真となって勢いよく飛び出てくる。
あっという間に部屋を埋め尽くすほどになった写真たちは、しばらくのあいだ天井と父の間を舞っていた。と、次の瞬間、一斉に天井を突き抜けて空へと飛んで行った。
「御臨終です」
医師の声が部屋に響く。不思議と涙は出なかった。
「お疲れ様」
静かに眠る父に声をかけた。そして、自分も沢山の写真を遊泳させられるように、これからの日々を過ごしていこうと思った。
「最後のお別れを」医師が告げる。
父の体から止めどなく写真が舞い上がる。一枚捕まえて見てみると、それは20代と思われる父だった。もう一枚。こっちは母と仲良く手をつないでいる。家族旅行の写真。初孫を抱いてくしゃくしゃの笑顔のもの。
父の人生が写真となって勢いよく飛び出てくる。
あっという間に部屋を埋め尽くすほどになった写真たちは、しばらくのあいだ天井と父の間を舞っていた。と、次の瞬間、一斉に天井を突き抜けて空へと飛んで行った。
「御臨終です」
医師の声が部屋に響く。不思議と涙は出なかった。
「お疲れ様」
静かに眠る父に声をかけた。そして、自分も沢山の写真を遊泳させられるように、これからの日々を過ごしていこうと思った。
その他
公開:20/02/11 15:50
スクー
写真遊泳
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