水晶玉

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末期ガンを宣告され、余命幾許もないと医師から告げられた俺は、治療を断念し、終活に入るため、日本海の雪景色が一望できるホスピスを終の棲家に選んだ。
ある日、ひとりの色白い女性が俺の寝室へ見舞いにやってきた。見覚えのない女性だったが、俺に命を助けられたことがあるらしい。
その女性は、天然の水晶玉を俺に手渡し、「朝焼けの日、この水晶玉をかざしてみれば奇跡が起こる」と告げて立ち去った。
そして、朝焼けの日。水晶玉をかざすと、無数の炎のような光線が現れ、火の鳥のような形になったと思った刹那、水晶玉から俺の身体に向かって突き抜けていった。俺の身体は熱くなり、燃え輝く魂のようなエネルギーが漲った。
その不思議な出来事があった直後、全身に転移していたはずのガンは消滅し、生還することができた。
今思えば、あの女性は過日、日本海の浜辺で傷ついていた白鳥ではなかったか。俺の身を案じて恩返しをしてくれたのだろう。
その他
公開:20/02/11 06:23
更新:20/02/11 18:24
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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