孤高のキャッチャー

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竹中さんは決してボールを後逸しない。どんな球がきても、ボールは竹中さんのミットの中に収まる。超高校級のキャッチャーと言われている。
竹中さんは今年の3月で卒業する。今まで「あの高校は竹中がいるからキャッチャーが育たない」と言われてきた。悔しい。
でも今は悔しがっているときじゃない。竹中さんが卒業した後、正捕手になるのは僕だ。少しでも追いつくようにしなければ。

竹中さんの左手には窪みがある。
「いいか、捕手ってのは捕れるか、じゃない。捕るんだ。どんな球でも。そのためには今までの10倍、20倍の球数を捕れ。必死になって。手のひらにクレーターができるまで。そうすればボールから手に吸い付いてくる。もしお前にその気があるのなら、明日から練習に付き合ってやってもいいぞ」

そこまで努力をしていたのか。僕の心は震えた。
でも、クレーター、痛そうだな。うん、絶対痛いと思う。

翌日、僕は退部届を出した。
青春
公開:20/02/11 22:50
スクー 手の中のクレーター

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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