人魚のクリーム

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王子様に恋をした人魚姫は、僕の片想いの相手だった。彼女はめでたく人間になって王子と結婚してしまった。ふたりの仲を取り持った僕はお礼はもらったがなんだか生きているのが馬鹿らしくなってしまった。僕は海に飛び込んだ。
気づくと浜辺に寝転がっていた。何だ、死ぬこともできないのか。立ち上がろうと顔を起こすと、すぐ横に女の子がいた。彼女と同じ人魚だった。それにしても……。
「今、不細工って思ったでしょ!」
「そ、そんなこと思ってないよ!」
「人魚なんて皆このレベルよ。殆どの子が魔法のクリーム塗って一時的に綺麗になってるだけなんだから」
「助けてくれてありがとう」
「あなたイケメンだったからね」
女の子は悪戯っぽく笑う。確かに不細工だけれど、でもとても笑顔が素敵な子だ。
実は僕も、嫁いでいった彼女にもらった魔法のクリームを塗っている。僕も本当は。
彼女に自分を偽るのは嫌だと思った。
「聞いてほしいんだ」
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公開:20/02/12 12:00

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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