ランサムデバイス

　金に困った俺は、ある商人から便利なものを購入した。早速こいつを試すため、うろついていた令嬢を誘拐した。
「娘は預かった。返してほしければ１０００万円用意しろ」
　購入した装置を使い、令嬢の父親に脅迫文を送る。すると、すぐさま「入金されました」とメッセージが届く。そして、誘拐していた令嬢は、どこかに消えてしまった。

　ランサムデバイス。誘拐の身代金を電子マネーで決済し、同時に人質をもとの場所に戻すという便利な装置だ。もはや誘拐もITの時代となっている。

　だが、こいつには一つ弱点がある。ほら、もうパトカーのサイレンが聞こえてきた。
　どうやら送金の履歴を逆探知し、居場所がばれたらしい。さあここからが本番だ。

　ちなみに、後から聞いた話だが、ランサムデバイスを用いた誘拐成功事案はゼロだという。牢屋に入る前に教えてほしかった。