因果の湯

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俺はいま、頭をフル回転させている。

なぜだ。

男湯のなかで最も狭い浴槽。そこに俺の後から、恐ろしく体の大きな男が入ってきた。俺が入った時ですら溢れたのだ。だからこそ期待したのに…。

ちっとも溢れりゃしない。

さては、あの大男、筒状だな。尻から胸のあたりまでの空洞に、溢れるはずだったお湯が隠れてる。

いや待て。じゃあ、元々そこにあった空気は?

大男は不自然に大きく息を吸い込み、湯船を出ていった。なるほど。たしか入るときは、ふいーっなんて言ってやがったな。一応、だめ押ししとくか。

「あんたは風呂の作法も知らんのかい!湯に入るときは吸う。吐きながら出る。やり直しなさい!」

大男はびっくりしながらも、すいませんと小さく謝り、また湯船に入ってきた。大きく息を吸いながら…。あれ?

「そ、そんな馬鹿なー!」

声をあげると同時に、ケツから熱いものが一気に流れ込んできた。
その他
公開:20/02/10 17:56

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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