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あーあ。
僕は電車に乗るなり、スマホを家に忘れてきたことに気がついた。仕方なく、座ってぼんやりする。僕以外の乗客は、みんなスマホをいじっている。
次の駅で、乗ってきたおばあさんに席を譲った。僕とおばあさんはにっこりと笑い合った。おばあさんも、スマホを持っていなかった。膝の上の皺々の手が、春の日差しを浴びていた。
と、その手が、震えながら反対側の車窓を指した。
何だろう?
振り返ると、銀色の円盤が、いくつも空から降りてきていた。灼熱の光線が、辺りを焼き尽くす。崩壊する建物。逃げ惑う人々。燃え上がる桜の木。
「わあ、すごい」
車内の他の人々は、皆スマホに夢中で気がつかない。
こんな光景に気がつけるなんて、今日はスマホを忘れてきて正解だったかもしれないな。写真を撮ったところで、送る相手も、もういなくなるのだろうし。
僕はおばあさんの方を振り向いて、もう一度にっこり笑った。
SF
公開:20/02/10 16:43

ガラマイヤ( 日本 )

読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!

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