古びたバーで

古ぼけたバーで男が２人、酒を飲んでいる。
「月に行って来たんだ。月から見た地球はきれいだったなあ。」
１人の男が自慢げに話している。
兎ツーリストの月旅行が人気だ。特に満月の晩は、AIが組み込まれ月で生きられるように品種改良されたうさぎの餅つきが見学できて、その餅が振る舞われるので特に人気が高い。
「今回は特別にいちご大福だったんだよ。」
相手の男が訳知り顔で言う。
「ああ、ストロベリームーンだったからだね。実際にピンクに見えるって訳じゃないそうだけど。」
「それもあるかもしれないけど、かぐや姫とかナンとかの誕生日でもあったらしいよ。」
「誰？それ。」
「さあ…？」

カウンターの中で老いたマスターが小さなため息をついた。

「さて行くか。マスター、ごちそうさま。」
財布を出しながら男たちが聞く。
「それにしても古い店だね。いつからあるの？」

「もう千年以上になりますかねぇ。」