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毛布を捲ると顔が違っていた。私が「顔が違うよ」というと、「おはよう」と言いたげな顔が戸惑っている。無理もない。顔がこんなにも違っているのだから、筋肉とかの連動だって、変わってしまうのだろう。
「鏡を見る?」
私は、その質問が、とてつもなく重大な決断を相手に迫るものだと気付いていなかった。
顔は縦に揺れたのか、横に揺れたのか……
私が知る感情なんて氷山の一角でしかないのだろう。見下ろしたその顔はムクムクと隆起し、ペコペコと沈降して、複雑な立体地図みたいだけど、そこが南国なのか沙漠なのか、無人島なのかもわからない。
そこへ、二本の腕が毛布内を匍匐前進してきて「顔」の周囲を旋回した。
触れたいのだろう。触れるのが怖いのだろう。
なにしろ、その両方の掌もまた、違う顔だったのだから。
「何が見えるの?」
私はそう言いながら、知らない三つの顔の唇と思われる部位に、順不同の口付けをした。
「鏡を見る?」
私は、その質問が、とてつもなく重大な決断を相手に迫るものだと気付いていなかった。
顔は縦に揺れたのか、横に揺れたのか……
私が知る感情なんて氷山の一角でしかないのだろう。見下ろしたその顔はムクムクと隆起し、ペコペコと沈降して、複雑な立体地図みたいだけど、そこが南国なのか沙漠なのか、無人島なのかもわからない。
そこへ、二本の腕が毛布内を匍匐前進してきて「顔」の周囲を旋回した。
触れたいのだろう。触れるのが怖いのだろう。
なにしろ、その両方の掌もまた、違う顔だったのだから。
「何が見えるの?」
私はそう言いながら、知らない三つの顔の唇と思われる部位に、順不同の口付けをした。
その他
公開:20/02/10 09:32
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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