梅の君

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 梅祭りの賑わいに誘われて公園をそぞろ歩きしていると、からころと歩く君の着物姿を初めて目撃した。
 白と紅の細かい弁慶縞に羽織は米沢紬(つむぎ)、品の良い友禅縮緬(ちりめん)の帯を締め、頭に淡い花かんざしを挿している。初々しい君の清艶な薄化粧が澄んだ池の水面に映えていた。
 冬の終わりを告げるかのように、梅の鮮やかな一輪が枯草に落ちて、徐にその花びらを拾う君の白いうなじが僕の目にあらわになった。
 若干の下心を以て僕は後ろから君に声を掛けた。
 振り返る君の清純な瞳。化粧の必要もないくらい目鼻立ちも肌も美しい。咲きこぼれる笑みの中に八重歯を覗かせて、楚々と手を伸ばしながら恥ずかしげにその口元を隠す、その純(きよ)らかな指先よ。ああ、その泉の湧くような麗しくやわらかな声よ。
 おお、純真可憐な乙女よ。
 おお、大和撫子よ!
 あでやかな日だまりと、小梅の香りが僕らを包んでいる!
 春は近い!
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公開:20/02/09 22:35
梅の季節 をテーマに 何か書こうと 思ったら なぜか こうなりました

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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