笑門来福

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極寒の節分の夜、行く先々で追われた鬼たちはひどく疲れていた。
「兄ィ…ここ、妙ですぜ」
皆、足を止める。
大きく開かれた門。
目に飛び込んでくる『歓迎 鬼御一行様』の貼り紙。
「罠かもしれねえ。気ぃつけろ」

すると中から一人の男が出てきた。咄嗟に鬼たちが身構える。だが…
「おう、待ってたぜ!入んな入んな」
意外すぎる男の言葉に、鬼たちは思わず顔を見合わせた。

暖かい家の中で酒と豆をたっぷり振る舞われ、戸惑っていた鬼たちもようやく寛ぎ始めた。
「あのう、大将は何であっしらを…」
男は升で酒をあおって答えた。
「この寒いのに、問答無用で追っ立てるなんざ気の毒じゃあねえか。悪い奴と決まった訳でもねえのによう。まあ見てな。来年の節分は、町を挙げての盛大な祭りにしてやらあ」

自信満々に語る男を前に、子分たちが笑う。兄ィ株は思わず目を拭った。
来年…来年か…。
ああ、きっといい年になりそうだ…。
ファンタジー
公開:20/02/08 09:59
PURINさんの『転校生は鬼』 敬意と共感を込めて 来年の事を言うと鬼が笑う 本来は嘲笑の意味ですが ここはひとつみんなで楽しく 笑って福招きといきましょう

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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