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雪のないイブの夜。黒い空はだだっ広く寒々しかった。
病室には規則的な電子音と、給気マスクの籠った音が響いてた。
「メリークリスマス、香月さん。いつものマッサージしようか」
『……残念ですが、乾さん』
最後の一瞬まで、信じるって決めたんだ。
「ねぇ香月さん。鶏の香草焼き。香月さん程じゃないけど、俺も腕上げたよ。一緒に食べよう」
「ねぇ香月さん。プレゼントあるんだ。俺が創った香水。名前は『香月』。自信作だよ。……あぁでも、香月さんの匂いには敵わないな」
「ねぇ香月さん。結婚式、和装と洋装どっちが良い?俺は洋装。香月さんのスカート姿見た事ないから。きっと世界一綺麗だ」
「ねぇ香月さん。俺、今日で三十二だよ。出会った時の香月さんの年。ペースも揃ったし、二人で同じ時間生きよう」
「……ねぇ香月。ねぼすけ香月。……もう起きようよ」
聖夜の奇跡は起きず。
明け方、香月の容体は急変した。
病室には規則的な電子音と、給気マスクの籠った音が響いてた。
「メリークリスマス、香月さん。いつものマッサージしようか」
『……残念ですが、乾さん』
最後の一瞬まで、信じるって決めたんだ。
「ねぇ香月さん。鶏の香草焼き。香月さん程じゃないけど、俺も腕上げたよ。一緒に食べよう」
「ねぇ香月さん。プレゼントあるんだ。俺が創った香水。名前は『香月』。自信作だよ。……あぁでも、香月さんの匂いには敵わないな」
「ねぇ香月さん。結婚式、和装と洋装どっちが良い?俺は洋装。香月さんのスカート姿見た事ないから。きっと世界一綺麗だ」
「ねぇ香月さん。俺、今日で三十二だよ。出会った時の香月さんの年。ペースも揃ったし、二人で同じ時間生きよう」
「……ねぇ香月。ねぼすけ香月。……もう起きようよ」
聖夜の奇跡は起きず。
明け方、香月の容体は急変した。
ファンタジー
公開:20/02/07 20:47
更新:20/02/23 17:47
更新:20/02/23 17:47
シングルノート:
トップからラストまで、
香りが変わらない様調合した香水
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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