絶壁の人々

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そこは砂色煉瓦の村である。
乾燥した気候だが草木は多く、海辺であったから涼みやすい。
欠点といえば、険しい山肌が岸まで迫っており、人の住まいも洞窟みたいだったことだろう。
岩壁と海岸の間は人が擦れ違える程度。馬車は通れず、運送は人力頼み。
そんな辺鄙な土地でも人が住まうのは、周りが戦闘民族に囲まれる中の、唯一の温厚な農耕民族であったからだ。
もともと別の場所の普通の土地に住んでいたが、蛮族どもの襲来は日常的に起こり、どうしても攻め込みづらい場所を欲しなければならなかった。
まず岩壁をくりぬき住まいとした。水源の確保もしなければいけない。地下水を見つけるために岩壁を掘った。
次に農場。これも岩壁を削り土地を造る。まともな作物は少なく、キノコやウドが主に育てられた。
魚を確保するための桟橋も作られた。
そうしているうちに、海岸の岩壁は穴だらけとなり、世にも不思議な横穴の漁村となったのである。
その他
公開:20/02/09 01:08

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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