紡香師(ほうこうし)漆拾壱~万年朗

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「知ってたんすね、香月さんの身体の事。『万年朗』の事」
「大筋は。仕事の付き合いもございますし、研究仲間とも言える立場。互いに興味も必要もあったのですよ」
『あいつも色々抱えてる』と、香月さんも言ってた。香澄さんとは別の、深い因縁があるんだ。
「月峰さんの探し物って、……不老不死っすか?」
――沈黙。
「いいえ、逆です」
不老不死の逆――老化と死?でも『ある意味近い』って。同じとは言わなかった。
「捜していたのは、遺体と物証です。かつて傍にいた人の」
遠い、遠い声。
「研究に取り憑かれ、消えた彼を捜し、その死を認める事。不死など存在しないと証明する事。それが私の目的でした」
「……見付けたって、つまり」
「遺体が出ました。不死の薬がない事も、身をもって確かめました。これでようやく、前に進めます」
穏やかな微笑が、俺には抉られる様に痛かった。月峰さんの言いたい事が、ここに来たわけが解るから。
ファンタジー
公開:20/02/06 16:40
更新:20/02/23 17:46

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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