凧の王様

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ある国の王は凧が大好きだった。元は戦のために購入させたが、よほど嗜好に合ったらしく、瞬く間に魅了されていった。工房を造り、政務を適当に切り上げて自作してしまうほど熱中したようだ。
ある日のこと。極東より招かれた商人が品物とともに土産話を披露した。城の頂にそびえる黄金のシンボルを大凧に乗る盗人が盗み取る話である。当然、これは作り話だ。居合わせた家来たちはその通りに受け取ったため笑顔で聞いていたが、凧狂の王は違った。
早速工房に籠ると、なんと一日で大の字の人間四人分の大きさもある大凧を作りあげた。その意図を察した家来たちは、必死に止めにかかるが、王は一切耳を貸さない。
とうとう風の強い海辺へ繰り出すと、有無を言わさぬ早さで飛び立ってしまった。慌てふためく家来たちをよそに、王は空の旅を満喫する。
大凧の糸を手繰るただ一人の協力的な家来がナイフを取り出したのは、一段と強い風が吹いた時である。
その他
公開:20/02/06 17:00
更新:20/02/06 21:14

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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