信じるちから

10
9

私はテレビを目覚まし時計のように使っている。6時59分になると、大音量のテレビのスイッチが入る。布団を出ない私にニュース番組のアナウンサーは言う。
「おはようございます。7時になりました」と。
それがいつもの朝。変わらない朝だ。ところが今日は少し違った。
「おはようございます。7時なのかもしれません」
私は布団の中で困惑した。不安定な時代。不確定なことが多くて、もはや時間すら確かなものではないのかもしれない。だからアナウンサーは7時と言い切らなかったのだ。
私は不安になって大音量のニュースが流れている中、会社に電話をかけた。
「今日は行きません」
時代が時代だから、ここはきっぱりと言い切ることが重要だと思って、「どうして」の問いには答えずに電話を切った。
それから私はまた眠った。
翌朝。
「おはようございます。7時だと信じています」
私はアナウンサーの言葉に深く頷いて、また眠りに落ちた。
公開:20/02/06 10:19

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容