ラブレター

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平安時代、若い男女が恋に落ちた。それは永遠に続くかと思われたが、ある日、男は病にかかり息を引き取った。女は毎日死ぬことばかり考えた。

女は仏様の夢を見た。おお仏様、あの人に来世で会えるのなら私はすぐに後を追いたい。仏様は言った。それは叶わぬ。男が次に人として生まれ変わるのは千年後だ。そしてお前は二度と人に生まれ変わることはないだろう。

女は絶望し、そして立ち直った。愛するあの人が生まれ変わるなら手紙を残そう。千年も先に残る最高の恋文を。

女は歌人として全力で生き、最後にラブレターを残した。


・・・千年後。学校で男の子が一枚の百人一首かるたを拾った。男の子はそれを眺めると、ポケットに静かにしまった。

『あらざらむ 此世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふ事もがな(もうすぐ私は死んでしまうでしょう。あの世へ持っていく思い出として、今もう一度だけお会いしたいものです)』
〜和泉式部〜
恋愛
公開:20/02/06 21:08
更新:20/02/06 21:11
現代語訳は ちょっと差がつく百人一首講座 から引用させていただきました

よしお

400文字に収めるのに四苦八苦していますが、いろいろなジャンルにチャレンジしたいです。

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