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香月さんの体調が、その日はずいぶん良かった。
「イヌスケ……一緒に、寝よ…ぜ」
「はいはい」
九月後半。香月さんは、一日の大方を眠って過ごし、栄養摂取は点滴。身支度も自力で出来ず、ラボに連れてくのも不可能だった。言葉を発したのも二日ぶりだ。
「風呂、サンキュ。やっぱ、綺麗にしたいから」
「今夜が最後っすよ。もう完全消えた。ブレンド成功」
抱き締めても感じないくらい。それでも『零』にならない。
「なぁイヌスケ。今日さ、オレ、誕生日」
「えぇーもう。言ってくれたら、」
「くれねぇの?……今」
俺の目には、香月さんが女性に見えた。十歳じゃなく、三十三歳の香月さんに見えた。輝く様な美しさを『匂う』と表現するけど、まさしく匂う様だった。
「明日までお預け。そんで、俺の嫁さんになって下さい」
「けーち。だったらオレも、返事は明日まで保留」
そう、笑って眠った香月さんは、明日が来ても目を覚まさなかった。
「イヌスケ……一緒に、寝よ…ぜ」
「はいはい」
九月後半。香月さんは、一日の大方を眠って過ごし、栄養摂取は点滴。身支度も自力で出来ず、ラボに連れてくのも不可能だった。言葉を発したのも二日ぶりだ。
「風呂、サンキュ。やっぱ、綺麗にしたいから」
「今夜が最後っすよ。もう完全消えた。ブレンド成功」
抱き締めても感じないくらい。それでも『零』にならない。
「なぁイヌスケ。今日さ、オレ、誕生日」
「えぇーもう。言ってくれたら、」
「くれねぇの?……今」
俺の目には、香月さんが女性に見えた。十歳じゃなく、三十三歳の香月さんに見えた。輝く様な美しさを『匂う』と表現するけど、まさしく匂う様だった。
「明日までお預け。そんで、俺の嫁さんになって下さい」
「けーち。だったらオレも、返事は明日まで保留」
そう、笑って眠った香月さんは、明日が来ても目を覚まさなかった。
ファンタジー
公開:20/02/04 23:13
更新:20/02/23 17:42
更新:20/02/23 17:42
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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