太陽を盗んだのは

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 太陽を神殿で祀っていた。素性の知れない男に盗まれた! 錆びたギロチンのように鈍い空の下、ワシの銃が火をふく。男はそれを間一髪、よける。ふところに入れた小さな光を落としそうになりつつ。
「こら、古来より聖なるものとされてきた宝だ。丁重に扱え!」
「太陽は宝なんかじゃない。これは本来、空にあったものだ」
 なに? 太陽の守りびとをして五十年とすこし。そんな話は初耳だった。もう一度、銃を構える。パン! 男はまたも弾をかわす。
「旅で知ったんだ。太陽は本来、空を照らしていたんだと。光る空をあんたも見たくないか?」
 光る空。魅力的な響きだった。太陽が自分の元を離れる。許しがたい響きだった。
 パン! 弾が空を行った。最後の弾だった。男はふところから太陽を取りだす。空に浮かべる。鈍い色彩がやさしい光に変わって、ワシの執着心を溶かした。そして、確信。
 アァ太陽を空から盗んだのは、人間だった。
ファンタジー
公開:20/02/04 16:24

がらす玉の透明

ショートショートを通じて、ショートショートや掌編小説の構成・冒頭と結末のうまいやり方を学んでいきたいと思います。
好きな作家は最果タヒさん、金子みすゞさん、夏目漱石さん。星新一さんらショートショート作家に関してはこれからじっくり読んでいきます(駆け出しなう)

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