18と19の部屋

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そこは、18歳と19歳が行ったり来たりする部屋だった。マジックミラー前のソファ席は毎日出勤している子たちの特等席、新しく入った子は様子を伺う、何軒目かの子は鏡を見ながら何度も睫毛をあげる。

店長の「いらっしゃいませ」という声が聞こえると、みんな背筋を伸ばし、髪型を整え、リップを塗り直す。目の前にある鏡、その向こう側にいる“選んでくれる人”に意識を集中させるのだ。

「○○ちゃん、60分、オプションなし」

皆勤賞の○○ちゃんは、はぁい、と返事をし、店長からタイマーを受け取り、残りの仲間に手を振るともう一度リップを塗り直し、カーテンを開ける。立ち上がった瞬間、ほんのりアイコスの臭いがした。

ここは18歳と19歳しかいないのに、タバコの臭いと、いろんな香水のにおいと、女の子の香りが詰まっている部屋。選ばれた子だけ出られる、閉鎖空間。選ばれない子は画面の向こうで知らない誰かと繋がるしかない。
その他
公開:20/02/05 21:48
更新:20/02/05 21:52

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