山頂の紳士

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 悠然と流れる白いもやが大気の黄金の中に震える。
 黄燐を伴う太陽が東の地平線より静かに昇り、大地には無尽蔵の金波が押し寄せ、千山万水の清浄なる息吹を呼び醒ましていた。
 山頂には、一人の紳士が仁王立ちしている。
 紳士はジャケットを脱ぐと、腕まくりをし、厳かに頭部へ鉢巻を結い付けた。
 聳える山の上にさらに筋骨逞しい上体を泰然と聳えさせ、背筋を正すと、大きく息を吸い込む——。

 沖合の海に出た漁師が、不意に船上で振り返った。
 収穫作業のために畑に出ていた農家が、不意に空を見上げた。
 コンビニの深夜バイトの青年が、目を擦りながら不思議そうに窓の外を見た。
 病院で生まれたばかりの赤ん坊が、泣くのを止めて、外を見ながら笑った。

 その日のニュース。

<本日早朝、関東全域に大きな声で誰かが「ヤッホー」と叫ぶ声が聞こえました——。>
その他
公開:20/02/05 21:04
ヤッホー 例の紳士

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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