みえる

「おい、ゆき、どこ見てんだよ。変に視線ずらすんじゃねえよ！」

（あなたの左肩のところ、赤ちゃんが浮かんでるの。それ、いったいどこの子？）

「てめえ、ふざけんなよっ！ いいかげんにしろ」

（あたしはどうでもいいんだけれど、やっぱ、そんなのがいると気になっちゃうよね）

「しのぶ、なんとか言ってやれよ、このバカ猫に」

（しのぶの子じゃないんだよなあ。誰の子？）

「にゃあ」

「どしたの、ゆきちゃん」

（やっぱり伝わらないか）

「にゃあ、にゃああ」

（しのぶ、この男はクズ野郎だから別れた方がいいよ）

「ほんと、どうしたんだろうね。ゆきちゃん」

「だろ？ さっきから俺の左肩の方だけ凝視して。なんか見えてんのか？」

「あはは、まさかね。でも、わたしにはあんたの後ろに青白い顔の女が立ってるのが見えるよ。誰それ？」

「にゃあ」

（伝わってよかった）