病院の大部屋

入院して3週間になる。8人部屋は窓から外がよく見えないので、夜中にトイレに起きた後など、この廊下の端にある窓から外を眺めるのが習慣になっていた。最上階なので夜景が綺麗だった。

建物の端に階段があるが滅多に使う人はいない。たいていはナースステーション前にあるエレベーターを使うから。だから、歩いている音がするととても響くのだ。

今夜も上から降りてくる足音がする。2週間前に出ていった田中さんだ。

「こんばんは」と声をかけるが無言のまま病室へ入っていく。心なしか顔色が悪いようにも見える。

途端にナースコールが押され、あわてて人がやってくる。どうやら高木さんに異変があったらしいが、就寝時間をとっくに過ぎているのにも関わらず、私は何も咎められなかった。

翌朝、夜勤のナースがふたり、話をしているのが耳に入った。

「ゆうべもあの廊下の端の窓のところで出たらしいね。」

「わたしもふたり見た。」