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「……馬鹿。馬鹿野郎。香澄と言い、お前と言い、オレなんかの為に、何でそこまですんだよ」
目尻を涙が伝った。
「オレはオレの為に、お前の気持ち知ってて、巻き込んで利用して、無償で命懸けろって迫ってんだよ。あっさり『本望』なんて答えんな!」
「そこまで俺を買ってくれる。本望以外に何があるんすか?賭けに勝つ為にも、知識と経験はあった方が良い。俺、ここで死ぬ気なんて、これっぽっちもねぇもん」
香月さんの匂いの雫が、乗せた指で温かく滲んだ。
「介助犬だけいたって、主人がいなきゃ意味ない。二人で生き延びて、一緒に『紡香堂』続けましょう。この先何が起きても、俺達がどうなっても、俺は生涯、あんたの傍にいます」
麝香の原液を、香月さんが頭にぶちまけた。
「…ごほっ、う……っ匂い、消えれば、お前だって目ぇ覚める」
不思議なくらい平気だった。心の底から嬉しかった。
濡れた睫毛も、瞼も、唇も、香月さんの味がした。
目尻を涙が伝った。
「オレはオレの為に、お前の気持ち知ってて、巻き込んで利用して、無償で命懸けろって迫ってんだよ。あっさり『本望』なんて答えんな!」
「そこまで俺を買ってくれる。本望以外に何があるんすか?賭けに勝つ為にも、知識と経験はあった方が良い。俺、ここで死ぬ気なんて、これっぽっちもねぇもん」
香月さんの匂いの雫が、乗せた指で温かく滲んだ。
「介助犬だけいたって、主人がいなきゃ意味ない。二人で生き延びて、一緒に『紡香堂』続けましょう。この先何が起きても、俺達がどうなっても、俺は生涯、あんたの傍にいます」
麝香の原液を、香月さんが頭にぶちまけた。
「…ごほっ、う……っ匂い、消えれば、お前だって目ぇ覚める」
不思議なくらい平気だった。心の底から嬉しかった。
濡れた睫毛も、瞼も、唇も、香月さんの味がした。
ファンタジー
公開:20/02/02 23:19
フレーバー:香味
においと味わい
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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