童貞を殺す服

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 それは特殊な糸で出来ていた。満月の晩に引き抜いたマンドラゴラの粉、鳥兜の根の汁、蠍の殻などを煮出したものに三日三晩糸を浸ける。そして森の奥の祠に住む老魔女にその糸で布を織らせるのである。この村では童貞は重罪であった。とくに三十路を過ぎたものは否応なく処刑される。


 この村に住むカルキンは怯えていた。明日には三十の誕生日を迎えるのである。ちなみに風俗や強姦はアウトなのである。そーいうしきたりなんだよ、なんか。カルキンは焦った。


 カルキンには美しい幼なじみがいた。アンジーである。長らくカルキンはアンジーに想いを寄せていた。しかしアンジーはいまや人の妻。駄目元でカルキンはアンジーに土下座して頼んだ。アンジーはあっさりやらせてくれた。いやらしいなアンジーは。かくしてカルキンは童貞を殺す服から免れたのである。しかしいまもこの村では童貞を殺す服の犠牲者はあとをたたないのであった。
その他
公開:20/02/02 22:18
更新:20/02/02 22:23

千億アルマ( Tokyo, Japan )

Senoku ALMA
https://note.com/shiro_mid

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