紡香師(ほうこうし)伍拾壱~調香師

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ブレンドを行うにも、それなりの準備と期間が要る。諸々整え、夏休みからスタートしようと香月さんが言った。
「中和始めたら、仕事は出来なくなる。顧客や店の整理も必要だ」
「……店の事なんすけど。俺に任してもらえませんか?」
香月さんの顔が引きつった。
「香月さんが動けない間、俺が『紡香堂』を回します。営業が無理なら、在庫管理やメンテだけでも。そんで、大学中退して、一から香りの勉強して、調香師になります」
「冗談やめろ」
「仕事が出来なくても、指導は出来るでしょ。まずは準備期間、基礎を叩き込んで下さい」
「頭冷やせイヌスケ。お前にそこまで求めてない、第一、」
「下手すると、二人とも死ぬから?」
震えが舌先から、顔、肩、全身に回った。
「死臭がどんなにヤバいか、身をもって知ってます。判定するって事は、俺も死臭に触れ続けるって事。……一緒に越えられる。本望っすよ」
――がくん、香月さんが膝をついた。
ファンタジー
公開:20/02/02 22:05

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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