原木な私

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私は立春が怖い。春の後ろには梅雨がいて、その隣で夏が笑っている。暑くなれば薄着になる。そのことが私の気持ちを右肩下がりにしていくのだ。
うまれつき菌床体質な私は、外出するだけでたくさんのキノコの胞子を取り入れてしまう。やがて体のあちこちから様々なキノコが生えて止まらなくなる。茶色に黄色に赤に白。えのきのようなものから、さるのこしかけみたいな巨大なものまで。
君は君らしくそのままでいいんだ。そう言ってくれた優しい彼は、私の体に生えたキノコをひとつひとつ食べてくれて、そのたびに笑いだしたり、しびれがでたりして、夏になるとよく海辺の病院に入院したものだった。そんな彼も去年の夏、しめじのようにポロっと逝ってしまった。もう恋なんてしない。そう誓ったのに、秋にはまた、私の松茸に惹かれたという男と出逢ってしまった。
全身脱茸のエステで、あなたの問題は恋愛体質にあると指摘されて、私の目から舞茸が落ちた。
公開:20/02/04 14:18

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