だいずな調査

降り積もった火山灰の地層から掘り出されたのは、かつて東京タワーと呼ばれた鉄骨の一部だった。
私は東京発掘プロジェクトのメンバーとして、今は酸素の薄い地球に滞在している。古文書データによると私の先祖は東京で写真家という仕事をしていたらしい。
去年の発掘調査では大量の写真が発見されて、私はそれらを保存する作業の中で一万年前の東京を知った。
洗練された街並。雑多な横丁。鉄道や街路樹。濠端の夕焼け。街ゆく人の笑顔。中でも夜の東京タワーの写真は、星を導く灯台のように美しいものだった。
東京の民話に「ポトフ」という話がある。オリンピックという祭礼のあと、世界中の薪と火で熱された競技場を鍋にして、武道館の玉ねぎと、東京タワーのにんじん、アスリートたちを煮込んで、それを鬼が食べたという。
私は今回の発掘でその鬼を退治した「豆」と呼ばれる武器を見つけて、節分だか、せっぷんだかいう文化に迫りたいと思っている。