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七月三十一日は、うだる様な熱気が、夜になっても引かなかった。
「明日からブレンドに入る」
ついに来たと思った。俺の検定受験の兼ね合いもあって、ブレンドは足踏み状態だった。
「OK。その為の準備っすからね」
「……今なら引き返せる」
「何すかもう、らしくない。『オレに付いて来い』とか、バシーっとケツ叩くのが、」
背中からふんわり抱かれた。短い髪が首筋をくすぐる。
「髪、伸びましたね。ロングも見てみたいなぁ」
「七ヵ月で二センチ。身長が一ミリ弱……微々たるもんだけど、成長してる」
片付け途中のムエット(試香紙)から、麝香の匂い。香料で媚薬、夜の寝室の匂い。
「このまま自然に任せても」
魅力的過ぎる誘い。俺が爺さんになる頃、香月さんは十五歳くらいに育つかも知れない。
「ごめん香月さん。俺ね、思ったより欲張りだ。せっかくの人生、同じ速度で生きたい」
耳を掠めた『ありがとう』が、壮絶に色っぽかった。
「明日からブレンドに入る」
ついに来たと思った。俺の検定受験の兼ね合いもあって、ブレンドは足踏み状態だった。
「OK。その為の準備っすからね」
「……今なら引き返せる」
「何すかもう、らしくない。『オレに付いて来い』とか、バシーっとケツ叩くのが、」
背中からふんわり抱かれた。短い髪が首筋をくすぐる。
「髪、伸びましたね。ロングも見てみたいなぁ」
「七ヵ月で二センチ。身長が一ミリ弱……微々たるもんだけど、成長してる」
片付け途中のムエット(試香紙)から、麝香の匂い。香料で媚薬、夜の寝室の匂い。
「このまま自然に任せても」
魅力的過ぎる誘い。俺が爺さんになる頃、香月さんは十五歳くらいに育つかも知れない。
「ごめん香月さん。俺ね、思ったより欲張りだ。せっかくの人生、同じ速度で生きたい」
耳を掠めた『ありがとう』が、壮絶に色っぽかった。
ファンタジー
公開:20/02/03 20:46
更新:20/02/05 20:12
更新:20/02/05 20:12
ムエット:試香紙・香料試験紙
香水の試用に使う細長い紙。
直接肌に付けず、
香りを確認する為の道具。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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