紡香師（ほうこうし）肆拾弐～聞香

明けて元旦、香月さんは休園中の植物園を拝み倒し、ラボで研究始動。俺も立ち合いが許された。
見張りもかねて『紡香堂』に連泊（※昨日は別室）。親から電話でつつかれたが、今は香月さんが大事。
「初潮だな。卵子の痕跡も確認。生物的にオレは『女』として成熟した」
顕微鏡覗きながら、生々しい話すんなよ。俺が男だって、この人ちょいちょい忘れるな。
「とりあえず、一歩前進っすね」
「引き金が特定出来ねぇと、先に進まねぇけどな」
引き金――『俺』だったりして。物語的なご都合設定。もしそうなら、俺何だってするのに。
「推測は幾つか立つ。まず一時的な興奮、腹に力入った、誰かさんのせいで」
そっちの『俺のせい』！？
「次にローズマリー。チキン焼いた時」
「えぇ嘘！そんなもので！？」
「子宮収縮と月経促進作用があんだよ、ハーブ甘く見るな。……ただ誘発以前に、卵子の形成――要するに、排卵が起きた理由を探る必要がある」