放課後いもむし

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今日もきた。

プール終わりの怠さを引きずり、なんとなしに青空を眺めていた私は、背後で動く気配に気づいた。

放課後いもむしだ。

窓を伝って、緑の重たそうな腹を持ち上げながら、ゆっくりゆっくり前に進んでいく。
私だけに見えるこいつは、午後の眠たい授業で現れる。
窓側最後列の私の席からスタートし、窓を伝って前へと進むだけ。
害は特にない。
こいつを眺めてると、いつの間にか授業が終わり、放課後になるので「放課後いもむし」と呼んでいるのだ。

古典の教師が放つ単語を拾いつつ、視線はいもむしを追いかける。
窓に張り付くいもむしは、雲ひとつない青空の中を進む。

ゆっくり、ゆっくり。
規則的に腹をゆすりながら。

今日の放課後は、市民プールにでも行ってみようか。
でもやっぱりちょっとだるいな。
授業でも泳いだし。

放課後に思いを馳せ、青空を不器用に泳ぐいもむしを眺めながらあくびを噛み殺した。
青春
公開:20/02/01 11:31
更新:20/02/01 13:00

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