共時性同期障害症候群（未完）

「は？」
　耳慣れない診断名に、私たち夫婦の思考は停止しました。
「または、現時制繋留障害症候群とも言われています。娘さんの症状は、大発作にとてもよく似ていますが、fMRIと認知アンケートの所見から判断するに、こちらであろうと」
「そ、それで治るのでしょうか？」
　妻が声を搾り出すようにして尋ねると、医師は首を傾げた。
「まず、娘さんに何が起きているのかを説明します」
「あの、なるべく判りやすく願います」
　私は妻の背をさすりながら医師に頼んだ。すると医師は、また首を傾げて、「やってみましょう」とＰＣ画面をこちらに向けた。
「このファイルは文字や記号の羅列です。これが我々の認識している世界だとすれば、娘さんは」
　医師が同じファイルを別のソフトで開いた。するとそれは、真っ赤なハイビスカスの写真だった。
「このように全ての事物を同時に認識してしまうため、脳がパニックを起こすのです」
（未完）