魔法の小瓶

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「なにその小瓶?」

彼女はそれを指さし、僕に尋ねる。
それは市販の風邪薬の小瓶だ。

しかし、僕の部屋で大事そうに飾られているそれは、誰が見ても異質に感じるだろう。


「ああ…これは、死んだばあちゃんの形見みたいなもんでさ」

そう言うと、彼女は少し申し訳なさそうに
「ごめん」

と一言呟いた。


…この小瓶は、僕が大学生の頃、祖母が仕送りで送ってくれた物だ。
いつもお米と一緒にこの小瓶が送られてきた。

小瓶の中には500円玉が20枚程敷き詰められていた。

当時お金がなかった僕には、この小瓶は魔法の小瓶だった。

祖母の葬式で、母から、祖母は祖父にバレないように小瓶に少しずつお金を入れていたと聞き、涙が止まらなかった。


…今、この小瓶には、気づいた時に500円玉を入れ、祖母の命日に募金をしている。


祖母に返せなかった恩を、誰かの魔法の小瓶になりますようにと、願いを込めて。
その他
公開:20/02/02 08:14

七尾瞬

初めまして。七尾瞬と申します。
小説を読むのも書くのも好きで、今回、ショートショートに挑戦したいと思い、登録しました!
400字という限られた文字数の中でどれだけ表現出来るか不安もありますが、頑張りますので宜しくお願いします!

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