登校拒否と秘めた恋
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「明日は学校にきてくれる?」
山田くんは自転車を押しながら私に尋ねた。沈みかけた夕陽が、彼の白いスニーカーをオレンジに染める。
「気が向いたらね」
このやり取りも何度目になるだろう。私が学校へ行かなくなってから、彼は飽きもせず毎日やって来る。雨の日も雪の日も。私の日課である散歩の時間になると、どこからともなく現れて、おさがりの自転車をキイキイ鳴らしながら私の隣に並ぶのだ。
「みんな、君のこと待ってるよ」
「“みんな”なんて知らないわよ」
この男はどうしてこうも鈍感なのだろうか。私が学校に通うようになったら、こうやって彼をひとりじめする時間がなくなってしまうというのに。
「山本さんも寂しがってたよ。あと、この前の台風の時は心配してた。植木鉢だって飛んでくぐらいだったんだ。猫ならなおさら危ないだろって」
この男はデリカシーもないのか。私はため息をつく代わりに、にゃあと鳴いた。
山田くんは自転車を押しながら私に尋ねた。沈みかけた夕陽が、彼の白いスニーカーをオレンジに染める。
「気が向いたらね」
このやり取りも何度目になるだろう。私が学校へ行かなくなってから、彼は飽きもせず毎日やって来る。雨の日も雪の日も。私の日課である散歩の時間になると、どこからともなく現れて、おさがりの自転車をキイキイ鳴らしながら私の隣に並ぶのだ。
「みんな、君のこと待ってるよ」
「“みんな”なんて知らないわよ」
この男はどうしてこうも鈍感なのだろうか。私が学校に通うようになったら、こうやって彼をひとりじめする時間がなくなってしまうというのに。
「山本さんも寂しがってたよ。あと、この前の台風の時は心配してた。植木鉢だって飛んでくぐらいだったんだ。猫ならなおさら危ないだろって」
この男はデリカシーもないのか。私はため息をつく代わりに、にゃあと鳴いた。
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公開:20/02/01 23:52
更新:20/05/09 20:55
更新:20/05/09 20:55
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