手帳のペンギン。

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 真夜中。手帳を見つめる。ぎっしり書き込まれた予定。目を背けたくなって、手帳を閉じる。
 手帳の表紙には、一匹のペンギンのイラスト。

 え…。

 突然、ペンギンが動き、歩き出す。僕は目をこする。頬をつねる。イタイ。
 ペンギンは手帳の隅まで歩く。すると、一瞬からだを縮こませ、ひょいっと手帳の隣のノートのなかへ。テチテチと歩く。
 ちょうど、“教育史”のページ。ペンギンのお腹に“育”の文字がうつったとき。子どものペンギンが…。
 二匹は歩き出す。ノートの端まできた。すると、またひょいっと飛ぶ。次は、文庫の表紙。表紙は海の絵。二匹は泳ぎ出す。けど、生憎表紙には、燦々と海を照らす太陽。親ペンギンが、僕のほうを一瞥する。
 僕は急いで本棚から、図鑑を取り出し、文庫の隣に置く。
 僕が開いた北極のページ。二匹はひょいっと飛び移る。そのまま、氷の海へ…。



 僕の手帳から、ペンギンが消えた。
その他
公開:20/01/31 20:28
更新:20/12/22 16:02
記念すべき60作目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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