紡香師（ほうこうし）参拾漆～迷迭香

「そうそう、こないだイヌスケに食わした、ローズマリーの日本名も、マンネンロウだ。あれも『若返りのハーブ』って言われて、肌の調子整えたり、記憶を活性化する効能もある。漢字で書くと……」
『迷迭香』
「見果てぬ夢って感じだろ？オレはこっちが近いと思うな」
「待って。香月さん待って！一体、何の話してんすか」
「オレがこの年までどうやって生き延びて、何でこの仕事してるかって話だよ、聞きたくねぇならいいけど」
怒ってる？いや怖がってる。ほんとは思い出したくもないって顔。
「仕方ねぇよ、普通の病院じゃ手に負えねぇし、個人が研究出来る設備も知識も金もねぇんだから。臨床データとあらゆる組織サンプル取られたよ、病院に隔離されてずーっと。要は実験動物だ。不老のレシピが手に入りゃ良かったんだよ」
香月さんより、俺の方が震えだした。……そんな事って。
「結局、物にならなくてポイだ。だから自力で突き止める事にした」