紡香師(ほうこうし)参拾陸~マンネンロウ

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「毒って……香月さんの匂いが?俺は全然平気っすよ」
「まだ一年未満だろ。体表ですぐ分解されるから、何年も密着しない限り、大して影響出ねぇよ。……香澄はちょっと出てるけど」
ちりっと胸が疼いた。香澄さんも年のわりに若い。一緒にいた時間を連想して妬ける。店に来させない様にしてるって、そういう意味か。
「研究途中で、まだ全部は判ってない。脳味噌や代謝は機能してて、身体の成長に関わるホルモンが阻害される。表面の香りが直接破壊する事はないから、香りを嗅ぐ事で、脳がブレーキ掛けるらしいな。フェロモンは成長につれて発するから、芳香腺が増えれば抑制が強くなる。結果、一定年齢で停まって維持される。研究所の連中は『マンネンロウ』って名付けた」
研究所――嫌な感じがしてきた。事は香月さん個人の問題じゃないのか?
『万年朗』香月さんがメモに書いた。
「常に若いまま……不老の香りだとさ」
吐き捨てる様な声だった。
ファンタジー
公開:20/01/31 19:01
更新:20/02/01 10:24

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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