紡香師(ほうこうし)参拾肆~芳香腺

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香澄さんみたく、引っ叩かれるなら望みがあった。
「ど下手くそ」
出会い頭にばっさり。顔色も変えやしねぇ……!
「犬の方がマシだボケスケ。てめえにオオカミの真似なんざ十万年早ぇ」
あーあ、徹頭徹尾、香月さんだ。さっきまでのシリアスぶち壊し。それもこれも、俺が根性なしのせいか……。
「事の発端からはっきりさせたいんすけど」
「疑うんなら、戸籍謄本とか、アルバムとか見せようか?」
「アルバムは今度見る。けど、俺が一番気になんのは、匂いっすよ」
俺達が出会ったきっかけ。俺がずっと触れて来た、香月さんの匂い。
「香料は使わないって、香月さん言いましたよね。でも、俺はいつも匂いを感じる。体臭とも違う、説明出来ないけど印象に残る匂い。それが俺の気のせいなのか知りたい」
「……芳香腺(ほうこうせん)。現代人が持ってないはずの、香りを発する汗の腺。オレが十歳から動かない根本原因だ」
ふわん、と匂いが瞬いた。
ファンタジー
公開:20/01/31 14:36

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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