紡香師(ほうこうし)参拾参~香酔い

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「香澄が女の格好してんのは、俺の異常が、欠片でも普通らしく映る様にだ。どのみちあと十年もすりゃ、化け物にしか見えなくなるってのに。そんな無駄で意味ねぇ事に、あいつの人生使ってほしくない、けど。歪ませた原因が判ってて、オレが辛いからやめてくれなんて言えねぇ」
論点が違う。十分察してるだろうから言わなかった。俺に向けられた香澄さんの眼は、姉貴を心配する弟じゃなかった。剥き出しの嫉妬心と独占欲、恋敵に向けるオスの眼だった。もっとも、今や俺もそうなんだが。
「蜂谷の家は、別の弟が継いだ。香澄は勘当状態、家の敷居も跨げなくなった。本当ならあいつが継ぐはずだった。技量も才能もあったのに、そっくり棒に振った」
駄目だよ香月さん。これ以上、あんたの口で香澄さんを語るな。
――でないと。
「……イヌスケ?」
「健介。犬じゃねぇって、何べん言わせんすか」
ちくしょう。香澄さんのせいで、ファーストにしそこねた。
ファンタジー
公開:20/01/31 13:08

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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