桓武天皇異聞

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桓武天皇には野望があった。都を移す……つまり、遷都をしたかったのだ。
そのチャンスをずっとうかがってきたが、ついにやってきた。奈良の都で仏教勢力の横暴さが増してきて、都を移すしかないとの機運が高まったのだ。
桓武天皇は並みいる貴族を前に宣言した。
「朕は、遷都をせんとす!」
だれも笑わなかった。桓武天皇は自らの力量のなさを恥じた。そもそも、天皇がダジャレを言うとはだれも思っていなかったのだ。
建築が始まった長岡京だが、疫病や祟りが続き、淡路島に流される途中で客死した早良親王の呪いだとの噂が広がった。長岡京は諦めるしかなかった。
再び巡ってきたチャンスに、桓武天皇は新バージョンで挑んだ。
「朕は、遷都をせんと、す。もう一度言う。遷都をせんと……す」
場が静まる中、名のない貴族がクスリと小さく笑った。
桓武天皇は満足した。
三度目の遷都から日本を救った貴族の名前は、残念なことに伝わっていない。
その他
公開:20/01/31 23:03

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