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幼い頃から不思議に思っていた事があります。
散ってしまった桜の花びらは一体どこへ消えたのだろうか、という事です。
「下水に流されてお終いだよ」
あまりロマンチックではありませんがきっとそうなのでしょう。私も大人ですからそれくらいは分っています。

ある夕暮、私は道に迷い見慣れぬ雑貨店に吸込まれていきました。店には美しい写真がいくつも飾られているのですが、不思議な事にそこに映る光景はこの世界のそれとはほんのわずか違っているようなのです。私はふと一枚の写真に目を止めました。老夫婦がベンチで寄添っている素敵な一枚。いいえそれだけではありません。よく見ると空から雪のようなものがいくつもいくつも数限りなく舞っているではありませんか。
ああ、その正体が桜の花びらだと気付いた時、私の心がどれほど踊ったか。

そっか、そうだったのね。

そして私は私だけが知るこのささやかな秘密に『雪桜』と名付けたのです。
ファンタジー
公開:20/01/30 18:07
更新:20/01/31 08:30

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