つりあわないラーメン店①

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 立中森一。40歳。今日も我が聖地・来々軒の暖簾をくぐる。
 まずは目から。煌めくスープを従え陣取る煮卵・メンマ・海苔・ネギ・焼豚の配置は完璧で芸術的だ!
 次に鼻。湯気を鼻腔深くに導くと丸鳥と魚介・野菜が併さる磯と土の香り。母なる海と大地の境界を取払い地球丸ごと一杯に詰め込む神の所業!
 次に舌。汁は香りも一緒に取込む為、レンゲは使わず丼から直接啜る。この汁は神の涙か⁈ もらい泣きしそうだ! そうなるともう我慢できない!
 歯と耳も。一気に麺を啜る。弾力ある縮れ中太麺にスープが絡み唇を通る瞬間に奏でる音色♪ 噛むとプツンと弾けるハーモニー♪ ぁああ〜♬
 そこからは一心不乱に五感の全てでこの聖杯を全身に充満させることに集中する!
 この道50年の匠。神の使い。来々軒の大将が、その人生の全てをかけて研究し魂を込めたこの一杯!
 俺はその値段を推理する。
「7億⁈」
 大将「いや、790円」
ミステリー・推理
公開:20/01/30 04:36
更新:20/05/23 09:35
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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