あくび屋

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Kちゃんは付合いでフリーマーケットに参加することになった。だけど売る物なんて何もない。どうしよう、ぼんやり考えていたら、ふぁあああ。大きなあくびがひとつ出た。そうだ、あくびなら売るほどある。
早速『あくび屋』という看板を立てた。
けれどお客はちっとも来ない。
たまに来たと思ったら
「ふざけるのもいい加減にしろ」
と怒鳴られた。
結局、あくびは一つも売れなかった。
あーあ、つまんないの。
そこへ一人の青年がやってきた。
何だかひどく顔色がわるい。
目の下には大きなくまが横たわっている。
「あの、あくびを売ってるの?」
「そうだけど」
「ひとつくれない?」
「いいけど」
「いくらかな」
「五万円よ」
冗談のつもりだったが青年はこくと頷いた。
Yちゃんはわるい事をした気がした。
だってあくびなんてタダそのものじゃない。
でもそんな事はなかったのだ。
その夜青年は、百年ぶりの眠りについたのだから。
ファンタジー
公開:20/01/29 22:41
更新:20/01/31 07:04

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