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呼吸器に繋がれた、枯れ木みたいな手足。
黄ばんだ皮膚。くぼんだ眼。空洞みたいな口。明らかに、余命幾ばくもない。
老衰末期。昏睡状態のまま、今日明日が峠だろう。
「死期の近い動物は、特有の臭いがする。死体の腐敗臭とは違う、異質な臭い。死の気配……死臭としか言い様がねぇ」
その死臭を振り払い、昏睡から覚ましてほしい。それが今回の依頼。
「……無茶だよ。死人を蘇らせるなんて、医者だって不可能だ」
依頼主は、死の淵にある人の息子。絶縁状態だった母親に、せめて一言詫びたいらしい。事情があるにしても、虫が良過ぎると思う。
「オレの仕事だ。イヌスケは口出すな」
三日の入院を一日で切り上げ、別の病院へ。香月さんの顔色も蒼い。まだ仕事なんか出来る身体じゃないのに。
「死に近いから死臭がするのか、死臭を発し、感受する事で死に近付くのか。……もし後者だとしたら?」
だから試す。言い切った声は、微かに震えてた。
黄ばんだ皮膚。くぼんだ眼。空洞みたいな口。明らかに、余命幾ばくもない。
老衰末期。昏睡状態のまま、今日明日が峠だろう。
「死期の近い動物は、特有の臭いがする。死体の腐敗臭とは違う、異質な臭い。死の気配……死臭としか言い様がねぇ」
その死臭を振り払い、昏睡から覚ましてほしい。それが今回の依頼。
「……無茶だよ。死人を蘇らせるなんて、医者だって不可能だ」
依頼主は、死の淵にある人の息子。絶縁状態だった母親に、せめて一言詫びたいらしい。事情があるにしても、虫が良過ぎると思う。
「オレの仕事だ。イヌスケは口出すな」
三日の入院を一日で切り上げ、別の病院へ。香月さんの顔色も蒼い。まだ仕事なんか出来る身体じゃないのに。
「死に近いから死臭がするのか、死臭を発し、感受する事で死に近付くのか。……もし後者だとしたら?」
だから試す。言い切った声は、微かに震えてた。
ファンタジー
公開:20/01/29 22:22
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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