紡香師(ほうこうし)拾玖~死臭

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植物園から連絡が入り、支度もそこそこに駆け付けた。
――香月さんが倒れた。
研究室で気絶して、救急車で搬送、緊急入院。
蘭奢待の件が片付いてすぐ、次の依頼が来た。後回し出来ない仕事だって、またラボにUターンした。
「香月さん!」
白いベッド。点滴に繋がれた香月さん。
「……目ぇ開けて。香月さん!」
「うっせぇよ……。病室で、騒ぐな」
あんたのせいだよ!怒鳴り付けようにも、息すらしんどそうで、顔が蒼白通り越して土気色で。
ちゃんと生きてる。過労だって、命に別状ないって、説明も聞いたのに。
まるで幽霊みたいな。今にも死にそう――いや、死んだ人みたいな。
「落ち着け。死なねぇから。……風呂入りゃ落ちる」
「風呂!?ふざけてる場合じゃ、」
「死臭。合成香料」
意味不明。
「死の臭い。動物が死ぬ間際の、前兆。……仕事で使って、染み付いただけだ」
ぶっ叩いてやるつもりが、俺が過呼吸起こしてぶっ倒れた。
ファンタジー
公開:20/01/29 22:19
本作では死体が発する腐敗臭と 『死』の前兆である死臭とを 分離して考えます。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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