紡香師(ほうこうし)参拾壱~蜂谷

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「どういう意味っすか」
意味は解る。正確には受け付けない。
「あんた、言いましたよね自分で。今年で三十二って……嘘ついたんすか」
風呂入りながら、足りない頭で考えた。確かに香月さん自身は、自分は男だと断言した事なかった。俺が勘違いしただけで、隠す気もなかったのかも知れない。『香月さん』って呼び方、大人だからと思ってたけど、女だからって可能性もある。みんな知ってたのかも知れない、俺だけ知らなかっただけで。そう、無理矢理納得しようとした。
「ほんとは小学生だって?香澄さんとも双子じゃねぇってそういうオチっすか!?ふっざけんな冗談じゃねぇ!!」
胸倉を掴んだ。理由があるにしても、騙された気がした。
被害者ぶるには下種な魂胆。三十二の女ならって、一瞬期待したから。
俺が香月さんに惚れてるから。
「実年齢は三十二だよ。ちなみに本名は蜂谷(はちや)香月。小学生なのは、身体の年齢だ」
手から力が抜けた。
ファンタジー
公開:20/01/31 10:29

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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