廃車の行く先

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ミキの愛車は今日、廃車になる。一目見ただけでも、20年分の思い出が顔を出す。ミキは例えようのない寂しさを感じていた。

それは車も同じだった。車は機械であり、思いなどないと考えてしまうだろうが、本当はそうではないのである。車は、初めのうちは機械らしく思いはない。しかし、だんだんと気持ちが芽生えだすのだ。

「サチ、もう病院だからね」

ミキの娘が胃腸炎になったとき、車だって心配していた。いくら年月が経っても、廃車にされるのは寂しいのである。役目は終わったと潔くスクラップにされるとき、眩い光を見た。

車は居場所がわからなくなった。そして、己の目を疑った。ミキの亡き父親の元気な姿があったからだ。

「これは…ミキに買ってあげた車…。あの子、まだ乗ってたのか…」

優しく微笑むミキの父親は心から車を労った。この世で役目を終え天国に旅立った車は、これからも幸せを積んで走るつもりだそうだ。
ファンタジー
公開:20/01/31 01:19

みみ

むかし話、おとぎ話が小さい頃から大好きです。
誰かの目に留まるような物語が書けるように頑張ります!

コメントや☆をつけてくださる方、本当にありがとうございます。嬉しいなぁ、幸せだなぁと心から思いますm(_ _)m

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