だるまさんがころんだ

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風で桜が舞う。
「だるまさんがころんだ」
木に伏せた顔を後ろに向けると、3歳の娘がにこにこしながらピタリと止まっている。私も思わず微笑んだ。
また顔を伏せる。
「だるまさんがころんだ」
後ろを向くとランドセルを背負ったまま娘は真剣な顔でピタリと立っていた。負けず嫌いの娘はまるで睨めっこするようにじっと私を見ていた。
「だるまさんがころんだ」
3度目に後ろを振り返ると、中学生になった娘は私を無視して家に帰ってしまった。
「だるまさんがころんだ」
寂しさを我慢して、また後ろを振り返ると、高校生の娘はもうすぐ私に触れそうな距離まで来ていた。朗らかな雰囲気は妻に似ている。
「だるまさんがこ…」
言い終わるまでに背中をタッチされた。すぐに振り返り、逃げるスーツ姿の娘を追いかける。
「だるまさんがころんだ」
娘がそう言うと孫はピタリと止まった。2人を見ながら私は幸せを噛み締めた。
風で桜が舞った。
その他
公開:20/01/30 22:58

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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